コンクリート打ち放し仕上の質素で地味な外観から受けていた印象が、一歩聖堂内に足を踏み入れた途端に一変します。

少しずつ前に進んで行きます。
この画像からは、緩いカーブを描くシェル屋根がコンクリート打ち放しだと良く分かります。
直径43cm高さ11mのコンクリート打ち放しの柱のあまりの細さは、耐震設計の鉄筋コンクリート造の柱を見慣れている日本人には、信じられない程の細さです。
巾20m×奥行き56mの聖堂は、28本のこの細長い柱で支えられているのです。
何と質素であり禁欲的でありながら美しい聖堂でしょう。
4年前に訪れたローマやフィレンツェで見た、あまりに豪華で華美な装飾で溢れた教会堂も圧倒されながらも、違和感を感じずには居られませんでした。
この聖堂から感じられる美しさは、清貧の美学とも言える美しさであり、この美しさこそが教会に求められる本来の姿ではないかと思うのです。

聖堂入り口左側から
あまりに柱が細いゆえに、平面的には身廊と側廊の区別が明確ではないので、三廊式と言えるかどうか?
一般的な三廊式の石造教会では、中央の身廊の屋根と壁の荷重を、一段低く造られた側廊の屋根と壁が、身廊を両側から挟み込むようにして支えていました。
ペレは鉄筋コンクリート構造を用いることで、側廊の担っていた身廊を支えると言う役割りを無くした事で、天井高さを身廊と同等としたばかりか、側廊の外壁を重力から解放させ、光溢れる聖堂を造り出すことに成功したのです。
僅かに側廊を思わせるのは、アーケードの代わりに、波のように連続するヴォールト天井だけです。
少しずつ前に進んで行きます。
聖堂内にはステンドグラスを通して美しい光が差し込みます。
この教会は「もう一つのセント・シャペル」とも「コンクリートのセント・シャペル」とも言われる所以です。
なんの飾り気の無い柱は、まるで針葉樹の幹の様です。コンクリート打ち放しの武骨な表情と直径43cmと言う細さが、かえって強く自己主張をしているようです。
祭壇に上がる手摺も外壁のコンクリートパネルに似たデザイン。
ここでも乾式工法が取り入れられていると思われます。
緩いカーブを描くシェル屋根にも同じデザインのコンクリートバネルが嵌め込まれています。一部は照明器具が組み込まれているように見えます。
照明器具も豪華なものではありませんが、味わい深さがあります。
聖堂入り口右側から
一気に奥へ
奥に進んで祭壇横から入り口方向を見る。
反対に回って祭壇横から入り口方向を見る。
入り口方向を見る
2階にパイプオルガンが見えます。
コンクリート打ち放しの円柱が大樹に見え、まるで針葉樹の森の中に居る様です。
友人が神父さんに「塔に上れないか?」と聞いてくれたのですが「倒壊の危険があるので、塔には登れない」と言われました。但し2階までなら案内しますと言って下さいました。
螺旋階段は鉄骨で造った方が合理的だと思うのですが、厚さ数cm程度の薄いコンクリート製の螺旋階段は、かなり傷んだ印象です。
2階から塔に上る階段を見上げる。
2階から聖堂を見る